居抜き店舗・物件

内装や設備を“引き継いで”使える物件のこと

「居抜き店舗(物件)」は、前テナントが退去したあとも内装・什器・厨房設備などが残った状態で引き渡される物件を指します。スケルトン(内装を全撤去した状態)に比べ、箱づくりの手間を抑えやすいのが特徴です。

何がメリットになるのか

最大の利点は時間と初期投資の圧縮です。厨房機器や給排気・給排水、グリストラップ、電気容量、空調などが実用レベルで残っていれば、調達や工事の範囲が小さくなり、オープンまでのリードタイムを短縮できます。とくに同業態への転用(飲食→飲食、物販→物販)の場合は、レイアウトや床・壁・天井の仕上げも流用できるため、開業準備にかかる負担を軽くできます。

気をつけたい落とし穴

一方で、前店のイメージや動線が色濃く残る点は注意が必要です。看板や色使い、什器の高さ、カウンター位置がブランド標準に合わず、結局は大規模なやり直しが必要になることもあります。設備も年数が経っていると、冷機・給排気・配管の補修や交換が発生し、結果的にスケルトンと大差ない費用まで膨らむケースは珍しくありません。防火・衛生・バリアフリーなどの法令基準が改正されていれば、引継ぎ時にまとめて対応が必要になる点も見落としやすいところです。

フランチャイズ目線での相性

フランチャイズは統一された設計・導線・什器規格が強みです。居抜きは“あるものに合わせる”発想になりやすく、ブランド標準を活かし切れないままオープンしてしまうリスクがあります。とくにカウンター高さ、バックヤード動線、提供口の位置、席間寸法はKPI(提供速度・客席回転)に直結します。物件が好立地でも、標準図面に合わせられるかを先に確かめてください。

使いどころのコツ

居抜きが生きるのは、前テナントの業態と自店が近く、設備能力とレイアウトが目標値に近い場合です。たとえば、同規模の飲食で熱源・グリス容量・電気容量が足りている、もしくはサービス業でカウンター・バックヤードがほぼ流用できる、といった条件がそろうと効果が出やすいです。逆に、客導線や席配置を大きく変えたい計画であれば、スケルトンから素直に組む方が早くて安いこともあります。

最低限チェックしたいポイント(現調時の要点)

  • 法人・個人の設備所有権と残置物の扱い(譲渡契約書の有無、動産の保証)
  • インフラ能力:電気容量、ガス圧、給排水径、グリストラップ容量、排気経路と静圧、空調能力
  • 建築・法令:防火区画、避難経路、消防設備、食品衛生・換気量、段差解消の可否
  • 契約条件:原状回復範囲、看板掲出ルール、造作譲渡金の根拠、解約予告期間と違約条件

まとめ

居抜きは「あるものを活かして早く・安く始める」ための選択肢です。ただし、ブランド標準との適合設備の寿命・法令対応を読み違えると、時間も費用も想定以上にかかります。現地調査で数値と図面を突き合わせ、必要工事を洗い出したうえで、スケルトン案と総額と工期を並べて比較してください。条件が合えば強力な近道になりますし、合わなければ無理をせず“素直に作る”。それが、開業後のオペレーションと収益を守るいちばんの近道です。