FLコスト(エフエルコスト)
FLコストは Food(食材費)+ Labor(人件費) の合計額、またはそれを売上高で割った FL比率 を指します。飲食店の収益性を測る最重要指標のひとつで、「料理を作って提供する」ための一次コストが、売上に対してどれだけ重いかを示します。一般に個人経営の飲食店は60%以下がひとつの目安とされ、「Food 35%、Labor 25%」が典型的な内訳です。もっとも、業態や客単価、オペレーションの設計で最適値は変わります。
計算式と、感覚をつかむための具体例
FL比率(%)=(食材費+人件費)÷ 売上高 × 100
たとえば、月商が300万円、食材費105万円、人件費60万円なら、FLは165万円、FL比率は55%です(165÷300=0.55)。数字が下がるほど粗利益は厚くなりますが、下げること自体が目的ではありません。品質・提供スピード・再来店率を落とさずに適正化できているかが勝負どころです。
目安は“店の型”で違います
同じ「60%以下」でも、実態はさまざまです。
ファストカジュアルやセルフ注文・セルフ下げ導線を採用する店は 50〜55%まで下げられることがあります。テーブルサービス主体のビストロや居酒屋は、人手を多く要するため 55〜62%に収まりやすい。
フランチャイズでは本部の仕入れ力と標準オペで55%前後を狙える設計が多い一方、食材指定や広告分担で他費目が増え、「FLは良いのに最終利益が薄い」というケースも起こり得ます。FLだけで判断しない姿勢が大切です。
よくある“数字の落とし穴”
デリバリー手数料、プラットフォーム利用料、家賃や水道光熱費はFLに含まれません。そのため、デリバリー比率が上がると「キッチンは忙しいのにFLは改善して見える」という錯覚が起きます。総原価(食材+手数料)での粗利、人件費を含む時間当たり売上、客席回転など、関連指標とセットで見ないと判断を誤ります。
また、仕入れを本部指定に寄せるとFoodは安定しますが、季節高や為替で変動することもあります。月次だけでなく移動平均(3か月・6か月)でトレンドを確認すると、単月のノイズに振り回されません。
フランチャイズ選びでの使い方
資料請求や説明会では、モデル収支の「Food%」「Labor%」だけでなく、算出条件を必ず聞きましょう。ピーク時の人員配置、セルフ導線の有無、デリバリー比率、営業時間、メニューMIX——前提が違えば、同じ55%でも再現性がまるで違います。既存店の平均だけでなく中央値や四分位を見せてもらえると、現実に近いイメージが持てます。
まとめ
FLコストは、厨房とホールの動き方、メニュー構成、仕入れ力、教育の質がひとつの数字に凝縮された指標です。
理想は「Food 35% × Labor 25% ≒ FL60%以下」。ただし、業態やコンセプトにより最適値は変わる前提を忘れないでください。
数字を下げるのではなく、適正に保ったまま売上を伸ばすこと。つまり、ロスを減らし、手間の無駄を省き、看板商品の回転を上げることです。
毎日のFLモニタリングをルーティン化し、違和感が出たら客数・客単価・待ち時間と突き合わせて原因を特定してください。数字と現場感がつながったとき、利益は自然とついてきます。