附合契約
附合契約とは、契約当事者の一方(多くは企業・事業者)があらかじめ定めた契約内容(約款)を、もう一方の当事者(多くは個人や小規模事業者)が内容の交渉をせず、そのまま受け入れる形式の契約を指します。
契約内容について両者で個別に協議するのではなく、片方が提示した契約条件に形式的・一方的に合意する形態であることが特徴です。
代表的な附合契約の例
一般的な生活においては以下のような契約が附合契約の代表例です。
- 火災保険や生命保険
- 電気・ガス・水道といったインフラ契約
- 携帯電話・インターネット回線の契約
- クレジットカードの利用契約
これらはすべて、事前に用意された契約書・利用規約に同意する形で契約が成立するため、利用者が個別に契約条項を変更したり交渉したりする余地がないことが通常です。
フランチャイズ契約も「附合契約」である
フランチャイズ契約もこの附合契約の一種とされることが一般的です。
フランチャイズ本部は、自社のビジネスモデルや運営マニュアル、商標、契約条件などをひとつの「フランチャイズパッケージ」としてあらかじめ用意しており、加盟希望者はその内容に基づいて契約を締結します。契約内容については、一部の条件を除いて交渉の余地があまりないケースがほとんどです。
そのため、加盟者にとっては不利益やリスクを見落とす可能性もあることから、契約内容の透明性や説明義務が非常に重要とされています。
附合契約に対する法的な配慮(フランチャイズにおける対応)
フランチャイズ契約が附合契約であるという性質上、契約の公正さや透明性を保つために、日本では「中小小売商業振興法」に基づく法制度が整備されています。
この法律では、フランチャイズ本部が以下の対応を義務付けられています。
- 法定開示書面の交付
加盟希望者に対し、事前に事業内容・契約条件・ロイヤルティ・財務情報など、合計22項目におよぶ「法定開示書面」を書面で提供しなければならない。 - 内容説明義務
書面の交付だけでなく、記載された内容を対面または明示的に説明する義務もあります。加盟希望者が内容を理解したうえで契約を結ぶことが求められます。
このような制度により、附合契約であっても加盟者が過度に不利益を被らないよう、一定の保護が図られています。
まとめ
附合契約は、事業者と消費者・個人事業主との間で広く使われている契約形態であり、フランチャイズ契約もその一種です。契約内容に交渉の余地が少ないからこそ、本部側には情報開示の義務があり、加盟者側も契約前に内容の十分な理解と慎重な検討が求められます。
附合契約であるという前提を理解し、契約前には専門家の意見を聞くなど、リスクを事前に把握することが成功への第一歩となります。