法定開示書面

法定開示書面とは、フランチャイズ本部がフランチャイズへの加盟を希望する人に対して、契約締結前に必ず渡すことが義務付けられている「事前説明書類」のことです。正式には「情報開示書面」とも呼ばれます。

これは中小小売商業振興法 第11条第1項および同法施行規則 第10条に基づいて定められており、フランチャイズ契約に関わる重要事項を、あらかじめ文書で説明することが法律で義務化されています。

法定開示書面が必要な理由

フランチャイズ契約は、長期間にわたって継続する重要な事業契約であり、契約後にトラブルが発生しやすい側面があります。

そのため、加盟希望者が本部の情報を事前に十分に把握したうえで、納得して契約に進めるようにするための透明性確保が目的です。

この書面を交付することで、本部と加盟者の間の情報格差を縮め、公正な契約判断を可能にします。

開示が義務付けられている22項目(概要)

法定開示書面には、以下のような内容を含む全22項目が記載されます(※一部抜粋)。

  • フランチャイズ本部の概要(会社情報・代表者名など)
  • フランチャイズ事業の概要と実績(出店数、直営・加盟比など)
  • 契約期間、更新条件、解除条件
  • 加盟金、保証金、ロイヤリティの金額と支払条件
  • 商品・サービスの販売条件と制限
  • 商標や看板の使用に関する条件
  • 本部による経営指導の有無と内容
  • 訴訟履歴・行政処分の有無
  • 直近の財務情報や収支状況(重要経営指標)
  • 契約終了後の競業避止義務などの制約内容 など

この情報を事前に把握することで、「開業後に思っていた内容と違った」「契約条件に不利な条項があった」といった加盟後の後悔やトラブルを未然に防ぐことができます。

フランチャイズ加盟を検討する際の注意点

  1. 必ず事前に受け取る
     法定開示書面は、契約の14日前までに交付することが義務付けられています。書面を受け取らずに契約を急がせるような本部には注意が必要です。
  2. 内容を十分に読み込む
     記載されている内容は専門用語が多く、難解な部分もあります。不明点は質問し、可能であれば専門家(中小企業診断士・弁護士など)に相談しましょう。
  3. 他ブランドと比較検討する
     複数のフランチャイズ本部の開示書面を比較することで、どのブランドがより透明でリスクが少ないかを判断できます。

法定開示書面が不要な場合もある?

飲食業・小売業など、中小小売商業振興法の対象業種に該当する事業においては、法定開示書面の交付が必須です。

一方で、サービス業など同法の対象外業種においては、法律上の義務はありません。ただし、日本フランチャイズチェーン協会(JFA)などのガイドラインに基づき、任意で「自主開示書面」を用意している本部も増えています。

加盟希望者としては、業種を問わず「契約前に詳細な情報開示を行う本部かどうか」を見極めることが重要です。

まとめ

法定開示書面は、フランチャイズに加盟する際の“契約の羅針盤”ともいえる存在です。

  • 本部の信頼性や経営実態
  • 契約条件や費用の内訳
  • 開業後に必要な運営体制

といった重要な情報が網羅されており、加盟希望者が安心して判断できる材料として不可欠です。

契約を急がず、必ずこの書面をもとに比較・検討を行い、自分に合ったフランチャイズかどうかを見極めてください。情報公開に積極的な本部ほど、長期的に安定した関係を築ける傾向があります。