レギュラーチェーン(RC)
直営による統制型多店舗経営の基本形
レギュラーチェーン(Regular Chain:RC)は、企業が自社で直接運営する複数の店舗を統一管理するビジネスモデルです。直営店だけで構成されるため、店舗ごとの経営方針のブレが少なく、企業としてのブランド戦略やサービスの品質を高い水準で保ちやすいのが最大の特徴です。
日本では、大手スーパー(例:イオン、イトーヨーカドー)、百貨店(例:高島屋、三越)、一部のファストファッションブランド(例:ユニクロ)などがこの形態で展開しています。
特徴
- 本部が全面的に出資・管理
店舗の開発、設備投資、人材採用・教育、商品仕入れ、販促まで全てを本部が担当します。加盟店を通さないため、経営資源の集中投下が可能です。 - 業務標準化・ブランド統一がしやすい
すべての意思決定が中央集権的に行われるため、ブレないブランド構築や迅速な戦略展開が可能になります。 - 本部リスクは大きいが利益も直接吸収
失敗した場合の損失もすべて本部が背負う一方で、売上や利益もすべて本部に入るため、スケールメリットが大きいモデルでもあります。
メリット
- ブランド統制力が高い
看板、接客、商品構成、内装、販促などを本部が一貫して統括できるため、どの店舗でも同等の顧客体験を提供できる。 - 新しい施策を迅速に導入可能
各店舗の合意を必要とせず、全店舗に一斉導入できるため、トライアル施策やデジタル施策の展開がしやすい。 - 利益が本部に集中する
ロイヤルティなどの間接的収益ではなく、ダイレクトに粗利・営業利益を吸収できる。
デメリット
- 資金負担・人材負担が重い
出店・改装・採用などの初期投資・ランニングコストをすべて本部が負担するため、急速な多店舗展開には限界がある。 - 地方展開やニッチ市場への対応が弱い
現場に権限が少ないため、地域の実情に即したサービスや商品展開が遅れる可能性がある。 - リスクの集中
自然災害、感染症、景気後退などの影響を本部が直接受けるため、経営破綻リスクも背負いやすい。
フランチャイズ(FC)との比較
項目 | レギュラーチェーン(RC) | フランチャイズチェーン(FC) |
---|---|---|
店舗運営者 | 本部社員 | 加盟店オーナー |
資金負担 | 本部 | 加盟者(フランチャイジー) |
展開スピード | 比較的遅い | 急速に全国展開可能 |
統制のしやすさ | 非常に高い | 加盟店の自由度による差がある |
収益モデル | 売上・利益を直接吸収 | ロイヤルティや仕入マージンなど間接収益 |
店舗の裁量 | 小さい(マニュアル重視) | やや自由(店舗判断が影響する) |
活用事例
- ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)
国内外で直営中心のRCモデルを採用。グローバルに統一されたオペレーションと商品戦略を徹底し、全世界に同一品質のブランド体験を提供。 - イオングループ(GMS・SM)
商品企画、物流、販売促進などを集中管理し、全国各地で均質なサービスを展開。 - 無印良品(良品計画)
海外ではFCを活用する一方、日本国内ではRCモデルで店舗品質をコントロール。
今後の展望
現在、日本国内では少子高齢化・人口減少により、RCのような直営型モデルはコスト構造の見直しを迫られています。その一方で、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やAIの活用により、RCの管理コストを下げる施策が急速に進んでいるため、直営でも収益性の高い店舗運営が可能になりつつあります。
また、旗艦店(ブランドの顔となる店舗)や体験型店舗の設置などは、今後もRCが主流であり、ブランド戦略の核としての役割は今後も変わらないと考えられます。