加盟預託金

「万一に備える保証用の預かり金」。原則返還が前提、使い道と清算条件が命です

加盟預託金は、フランチャイズ契約を結ぶ際に加盟店が本部へ無利子で預ける保証用の資金です。目的は、運営中に発生し得る未払い・損害の一時的な立替原資を確保しておくことにあります。
よく混同される加盟金(教育・ノウハウ利用などの対価)は原則返還されませんが、加盟預託金は“預かり金”なので原則返還が前提です。会計上も、加盟店側では差入保証金等の資産、本部側では預り金(負債)として扱われるのが一般的です(実際の会計・税務は専門家にご確認ください)。

どのように使われるか(代表的な運用)

  • 相殺・充当のためのプール:ロイヤリティや仕入代金の滞納、広告分担金・立替金、原状回復費用などの一時補填に充てられます。充当した場合は、一定期間内に補填(積み戻し)を求められるのが通常です。
  • 初期手続きの原資:研修・開店準備に関する実費の一部を、合意の範囲でここから充当する運用もあります(この場合も何に・いくらまでを契約で明示するのが前提です)。

期中は手を付けず、契約終了時に精算のうえ返還する方式もあります。いずれにせよ、使途・相殺の順序・上限・補填期限が文書で定義されていることが重要です。

契約で必ず確認したい要点(実務の“芯”)

  • 金額と算定根拠:固定額か、売上規模・店舗タイプでの段階制か。増床・追加設備で追加預託が生じる条件はあるか。
  • 使途の範囲と優先順位:どの費目まで相殺対象か(ロイヤリティ、商品代、広告、備品、損害金 等)。相殺の順序・上限・通知方法はどう定めるか。
  • 補填(積み戻し)義務:充当後、何日以内に全額補填が必要か。未補填のまま運営継続できるのか。
  • 分別管理と保全:本部の口座での分別管理か、保証・保険・信託等の保全手当があるか。
  • 返還条件と期日:契約終了時の清算基準日、必要書類、返還期限(例:最終精算完了後◯日以内)、利息の扱い(通常は無利子)。
  • 途中解約時の扱い:違約金・原状回復費用などとどう相殺されるか。合意解約でも費用精算後の残額返還が原則化されているか。

上記が曖昧だと、「返してもらえると思っていたのに戻らない」「想定外の費目で相殺された」というトラブルに発展しやすいです。

キャッシュ面の影響――“運転資金の枠”が縮みます

預託金は無利子でロックされる現金です。開業初期は仕入・人件費・家賃などの支払いが先行するため、預託金を差し引いた実質の手元資金で資金繰りを設計してください。目安としては、固定費2〜3か月分+平均在庫1か月分を預託金とは別に確保しておくと、立ち上がりの“資金の谷”に耐えやすくなります。

実務での交渉アイデア(無理なく、現実的に)

預託金はゼロにできないことが多いですが、返還の確実性とキャッシュ負担の平準化は工夫できます。例えば、
「使途を未払の法定費目に限定」「相殺は月次精算書での通知+一定日数の異議申立て期間を設ける」「充当時の補填期限を60〜90日に延ばす」「段階預託(開店時◯%、売上到達で増額)」などです。場合によっては銀行保証や保証保険で一部を代替し、現金拘束を軽くする選択肢も検討に値します(可否は本部次第)。

返還までの流れ(イメージ)

契約終了→最終月の精算書確定→在庫・備品・看板・データの処理→立替金・公共料金等の確定相殺後の残額返還という順序が一般的です。期中に充当があった場合でも、相殺根拠と計算明細が提示される運用だと透明性が上がります。

まとめ

加盟預託金は、フランチャイズを安全に回すための“万一のクッション”です。だからこそ、

金額と使途、2) 相殺の順序と補填期限、3) 返還条件と期日、4) 分別管理や保全手当――この4点を書面で具体化し、資金計画には預託金を除いた手元資金で余裕を持たせてください。条件が明確であれば、預託金はリスクではなく、本部と加盟店の相互安心を担保する仕組みとして機能します。