違約金
契約違反が起きたときに支払う“清算ルール”
違約金とは、フランチャイズ契約で定めた義務に違反したときに、加盟者が本部へ支払う金銭のことです。条文上は「損害賠償額の予定」「違約罰」などと表現されることもありますが、いずれも金額や算式をあらかじめ取り決めておく仕組みという点は同じです。目的は、揉めごとのたびに損害額を一から立証せず、迅速・公平に清算することにあります。
どんなときに発生するのか
代表的なのは、ロイヤルティや仕入代金の支払い遅延、本部の承認なく価格や仕入先を変更した場合、衛生・品質基準に反する運営、無断休業・営業時間の短縮、商標やマニュアルの不正使用、競業避止義務に反する行為、そして契約期間中の中途解約などです。多くの契約では、まず是正の催告(○日以内に改善すれば不問)が置かれ、従わない場合に違約金が発動します。重大違反(消費者の安全に関わるもの等)は催告なしで発動…といった運用が定められることもあります。
金額はどう決まるのか
決め方は大きく二通りあります。ひとつは固定額方式(例:違反1件につき○万円、中途解約は○百万円)。もうひとつは算式方式で、たとえば「平均月間ロイヤルティ × 残存契約月数 × 係数」や「直近売上高 × ○%」のように、事業規模と連動させます。中途解約では、初期研修・立ち上げ支援の未回収分や看板の撤去・在庫処分などの実費見込みが係数で調整されることが多いです。さらに、上限額の設定や不可抗力(災害・法改正)での免除が条文に入ることもあります。
「損害賠償の予定」と「違約罰」のニュアンス
呼び名が違うと法的な読み方が変わる場合があります。
「損害賠償額の予定」は、予定額を払えば原則としてそれ以上の賠償は求めないという設計が一般的です。一方「違約罰」は、予定額に加えて別途賠償を請求できる趣旨で書かれることもあります。条文の文脈次第で解釈が分かれるため、**清算条項(これで責任がすべて消えるか)**の有無まで読み合わせることが大切です。
契約前に必ず確認したい要点
- 発動条件と手順:どの違反で、催告や猶予はあるか、どのタイミングで請求されるか
- 算定方法と清算範囲:固定か算式か、上限や免除事由はあるか、違約金の支払いで責任が完全に清算されるのか
自分の数字に置き換えてみる
条文を理解したら、自店モデルの収支表に当てはめると輪郭が見えます。たとえば、残存24か月・平均ロイヤルティ20万円・係数0.5なら中途解約の違約金は20万円×24×0.5=240万円。ここに看板撤去や在庫処分が別途なら、総キャッシュアウトはさらに膨らみます。最悪ケースでも資金が尽きないかを確認し、出店規模や契約期間の妥当性を調整しましょう。
まとめ
違約金は“罰”というより紛争を素早く収めるためのルールです。だからこそ、発動条件・計算式・清算範囲を自分の言葉で説明できるレベルまで整理してからサインしてください。加盟者は防御線を、フランチャイズ本部は根拠の明快さを――双方が意識するほど、チェーン全体の健全性は高まります。