運営委託方式

物件と顧客はある。経営と運営だけを任せるやり方

運営委託方式とは、店舗や事業所そのものはすでに存在し、日々の運営・経営だけを第三者に任せる契約形態です。任せる側を運営委託者、実際に現場を切り回す側を運営受託者と呼び、契約上は「委託契約方式」と表記されることもあります。塾でいえば、教室・生徒・講師・カリキュラムは整っており、その教室運営を受け持つ人が運営受託者にあたります。フィットネス、学習塾、介護・家事支援、コインランドリーの有人店などで広く使われています。

フランチャイズとの違いは、看板やノウハウの“権利”を買うのではなく、既存拠点の“運営責任”を引き受ける点です。初期投資が比較的軽く、立ち上げの不確実性も小さい一方で、メニューや価格、販促などの裁量は契約で定められた範囲に限定されます。報酬は月額固定+業績連動のインセンティブという形が一般的で、赤字補填や大規模修繕の負担をどちらが持つかも契約で明確にします。

フランチャイズとの関係――“独立の助走路”にも“立て直し”にも

フランチャイズ本部が直営店を運営委託し、一定期間の成果とガバナンス遵守が確認できた段階で、その担当者とフランチャイズ契約を結びオーナーとして独立させる――そんな“助走路”として運営委託を使うケースがあります。逆に、既存のフランチャイジーが運営する店舗が不採算に陥った際、本部が直営に切り戻してテコ入れし、体制が整い次第ふたたび委託や再加盟に切り替える、といった使い方もあります。いずれも、ブランドの品質維持とキャッシュフローの安定を意識した運用です。

こんな人・企業に向いています

立地選定や内装投資のリスクを取りにくい方、まずは「現場を回す力」に集中して実績を積みたい方に相性が良い方式です。店舗運営や人材マネジメントの経験があれば立ち上がりは早く、未経験でも本部マニュアルや既存スタッフがあるぶん、ゼロからよりは入りやすいのが特徴です。副業での検討なら、裁量と責任の範囲、オーナー常駐の要否をあらかじめ詰めておくと、想定外の工数増を防げます。

契約で押さえるべき要点(必要最小限)

  • 報酬設計とリスク分担:固定報酬とインセンティブの算式、赤字時の扱い、重大クレームや設備故障時の費用負担。
  • 権限とKPI:価格・販促・採用の裁量範囲、必達KPI(売上・粗利・CS・衛生)、未達時の是正手順と契約継続条件。

※上の二点は、面談・契約前に必ず文書で明文化してもらいましょう。口頭合意のまま運営に入ると、トラブル時の判断がぶれます。

よくある誤解と実務のコツ

「運営を任される=自由に改善できる」と考えがちですが、実際はブランド標準の順守が大前提です。改装や価格改定、販促の変更は承認制であることが多く、裁量の広さはチェーンによって差があります。現場では、既存スタッフの勤怠・評価制度を整理し、“誰が”“いつ”“何を”決めるかを最初に言語化しておくと、引き継ぎ後の混乱を防げます。資金面では、給与・家賃・仕入の支払いタイミングと、売上の入金サイトを並べ、13週の資金繰り表を持つと安心です。

まとめ

運営委託方式は、出来上がった箱と顧客基盤を活かしながら、運営力で成果を出すスタイルです。フランチャイズの手前で腕試しをしたい人にも、傷んだ店舗を短期で立て直したい本部にも有効なカードと言えます。魅力は初期リスクの軽さ、難所は裁量の限定と責任の明確さ。報酬設計とKPI、リスク分担の三点をクリアにできれば、堅実に成果を積み上げられる方式です。