契約期間

何年にするかで、回収スピードと自由度が決まります

「契約期間」は、フランチャイズ契約を結んでから終了するまでの年月を指します。単なる“年数の取り決め”ではなく、投資の回収可能性・店舗の自由度・再投資のタイミング・退出コストまで左右する、最重要の設計要素です。一般には3〜10年の幅で定められることが多いですが、業態(飲食・サービス・物販・BtoB)や本部方針、物件の賃貸条件によって最適値は変わります。

期間をどう決めるか――基本ロジック

期間設計の出発点は、初期投資の回収年数です。加盟金・内装・機器・システム導入などの総額を、保守的なキャッシュフローで割り戻し、「安全に回収できる年数+バッファ」を最低ラインに置きます。並行して、テナント契約の残存期間(定期借家の満了や更新可否)、リース・ローンの満期モデルの陳腐化速度(メニュー・機器・ITの更新サイクル)を重ね合わせます。
ショートすぎる期間は「回収前に満了」を招き、ロングすぎる期間は「環境変化に縛られる」リスクが増えます。回収年数<契約期間<環境変化サイクルという“幅の中点”を意識すると、過不足のない設計に近づきます。

期間の“数字”が効いてくる場面

同じ投資額でも、期間が違うだけで意思決定は変わります。例えば、初期投資1,800万円・税引前月間キャッシュフロー30万円なら、単純回収で60か月(5年)が目安です。契約が3年なら回収前に満了し、再契約の不確実性にさらされます。逆に10年契約で賃貸借が5年満了だと、物件再交渉のズレが発生します。したがって、契約期間・賃貸借期間・主要リースの満期は、できるだけ同じ節目にそろえることが実務では重要です。

更新(再契約)条項の読みどころ

多くの契約では、満了時に更新(再契約)の仕組みがあります。留意点は次のとおりです。

  • 更新条件:重大違反がないこと、ロイヤリティや立替金の未払いがないこと、KPI達成などが条件化される場合があります。
  • 更新料・契約書の改定:更新時に改定版契約へ移行する取り決めが一般的です。ロイヤリティ率、広告分担、IT利用料などの変更余地を確認します。
  • 改装義務:ブランド維持のため、内外装や看板のリフレッシュを更新条件にする本部もあります。金額感と実行期限を事前に試算しておくと安心です。
  • 自動更新か、合意更新か:自動更新は連続性が高い一方、条件の見直し機会を逃しがちです。合意更新は交渉余地がある反面、不確実性を伴います。

途中で終わる可能性――解除・合意解約・承継

期間途中の終了は例外ですが、実務では起こり得ます。重大な契約違反による解除、双方合意での合意解約、オーナーの死亡・重病・相続に伴う承継などです。合意解約時は違約金が免除されるケースが一般的ですが、原状回復・看板撤去・在庫処理・データ返還などの実費は発生し得ます。承継については、後継者の適格性審査や本部承認の手順が条文化されているかを確認してください。

物件・設備との“足並み”をそろえる

テナントの解約予告期間(例:6か月前通知)や原状回復義務、機器のリース満期と契約期間がずれていると、満了時のキャッシュアウトが膨らみます。とくに定期借家は更新拒絶のリスクがあるため、再契約の可否・条件を前もって家主と握っておくと、安全度が増します。
また、複数店舗をまとめて契約するマルチユニットや、エリアを任されるエリアディベロップメントでは、店舗ごとの満了日がバラつくと管理が難しくなります。同月満了で統一する、または四半期単位に束ねるなど、運用面の工夫も有効です。

期間が長いとき・短いときの戦い方

長期契約は「安心」の裏に環境変化の固定化リスクがあります。物価上昇、最低賃金、競合の出店、デリバリー手数料の改定などに備え、価格改定やメニュー変更の手順、ロイヤリティ再協議条項(ハードシップ/見直し窓口)の有無を見ます。
短期契約は柔軟ですが、再契約交渉の頻度が上がり、回収がタイトになります。短期を選ぶなら、初期投資を軽くする設計(内装の可動什器化、リース活用、スケールしない固定費を作らない)で身軽さを確保してください。

後で揉めないための“最低限チェック”(必要なときに限定)

  • 期間の起算点:契約締結日か、オープン日か。遅延時の取り扱いはどうするか。
  • 更新の方法:自動/合意、更新料、改装義務、改定契約の適用可否。
  • 中途条項:解除事由と是正猶予、合意解約の可否と費用分担、承継・譲渡の承認基準。
  • 整合性:物件の賃貸借、主要リース、補助金の事業期間と整合しているか。

まとめ

契約期間は、“長ければ安心、短ければ柔軟”という単純な話ではありません。投資回収・環境変化・物件と設備の節目を一枚の表に重ね、最悪ケースでも資金が尽きない長さと条件を選ぶことが肝心です。更新や改装の条件、途中で終える際の出口、後継者の承継ルールまでを含めて設計すれば、期間は“しばり”ではなく安定運営の土台になります。