オープン・アカウント制
フランチャイズにおける「オープン・アカウント」とは、加盟店で発生した売上と各種支払いを本部が一括で精算し、差額を加盟店へ戻す会計運用のことです。コンビニエンスストアをはじめ、日次の現金・キャッシュレス取引が多い業態で広く採用され、「本部集中決済」「一括精算方式」と呼ばれる場合もあります。
オープン・アカウント制の全体像
毎日の売上データ(現金・クレジット・QR など)は POS を通じて本部に集約されます。売上代金は所定の口座にいったん本部名義でプールされ、そこから仕入代金、配送費、ロイヤルティ、広告分担金、システム利用料などのチェーン共通費用が相殺(ネッティング)されます。精算締めのタイミングで、差引き残高が加盟店へ入金される、というのが基本の流れです。
水道光熱費や人件費などの店舗固有費用は、チェーンによって本部立替→後日相殺の場合と、加盟店が直接支払う場合があります。どこまでを本部が立替えるか、契約で必ず確認してください。
例:月次精算のイメージ
- 月間売上(税抜)2,500万円
- 商品仕入・物流・本部指定商材などの支出 1,500万円
- ロイヤルティ・広告分担金・システム費 200万円
- 水道光熱費等 本部立替 50万円(チェーンにより有無)
この場合、差額 750万円が精算日に加盟店口座へ入金されます。人件費や家賃を加盟店が直接支払う形であれば、その支払いはこの入金から行う設計です。
メリット
- 資金繰りが平準化されます。大きな仕入支払いを本部が一括処理するため、取引先ごとの支払管理が軽くなります。
- 不正やミスを抑制できます。売上と仕入の照合を本部システムで行うため、過不足の早期発見につながります。
- スケールメリットを享受できます。本部がまとめて決済することで、手数料や条件が有利になりやすいです。
留意点(ここを見落とすと資金ショートの原因になります)
- マイナス精算(立替・貸付)
月間の差額がマイナスになると、本部からの立替・短期貸付で補填される方式があります。利率・返済条件・相殺順位は契約で事前に確認し、最悪ケースの月次キャッシュフローに織り込んでください。 - 控除項目の範囲
仕入以外に、販促費・備品・修繕・廃棄処理費が自動控除対象になることがあります。項目名と金額の明細(精算書)を日次/月次で確認し、計上ミスを早期に是正する体制を作りましょう。 - 締め日と入金日
「月末締め翌◯日入金」などのサイクルは、家賃・給与の支払日と必ず揃えるか、運転資金のバッファ(2〜4週間分)を別口座で確保するのが安全です。 - 本部依存度の上昇
便利な反面、資金の見え方が“精算書頼み”になりがちです。売上・原価・控除の生データをダッシュボードで毎日確認し、自店の実力値を把握する習慣が欠かせません。
まとめ
オープン・アカウント制は、多店舗の標準化と資金管理の負担軽減を実現する強力な仕組みです。一方で、控除の範囲・締め入金のサイクル・立替条件を理解せずに走り出すと、思わぬ資金ショートにつながります。
フランチャイズの資料請求や面談では、精算フロー図と実物の月次精算書サンプルの提示を依頼し、数字の“見え方”を必ず確認してください。仕組みを味方につければ、日々の運営はシンプルになり、安定したキャッシュマネジメントが実現できます。