解約金
途中で契約を終えるときの“清算の対価”。何に払うのか、どこまで含むのかを先に決めておきましょう
解約金は、フランチャイズ契約の期間途中で打ち切るときに支払う金銭です。性質としては「本部が投じた支援コストの未回収分」や「残存期間の機会損失の一部」を清算するための約定金で、契約書に金額や算式、請求までの手順が定められています。似た言葉の違約金は“義務違反へのペナルティ”としての色合いが強く、合意解約は双方の合意で円満に終了する方法です。実務では、どの終了パターンでも最終的に「いくら手元から出るか」は解約金+実費精算の合計で判断します。
どんなときに発生するのか(考え方の軸)
もっとも典型的なのは、加盟者の事情による任意の中途解約です。長期低収益や転居・健康上の理由など、違反がなくても期間途中でやめる場合に解約金の対象となります。契約違反による解除では、別途「違約金」や「損害賠償」の話になりますが、条文の設計次第では解約金と実費清算のみで処理するチェーンもあります。ポイントは、契約書が想定する終了理由ごとに金額の決め方が変わることです。
金額はどう決まるのか(固定か、算式か)
大きく二通りあります。ひとつは金額をあらかじめ決める固定額方式、もうひとつは算式方式です。算式方式ではたとえば「平均月間ロイヤリティ(または粗利×ロイヤリティ率)×残存月数×係数」のように、事業規模と残存期間に連動させます。係数には、初期研修・立ち上げ支援の未回収分や、ブランド毀損リスクの一部見込みが含まれるのが一般的です。上限や最低額を置く条文もあります。
何が“解約金”、何が“別清算”か
ここを曖昧にすると揉めます。多くの契約では、原状回復・看板撤去・在庫処理・データ返還・公共料金や決済手数料の未払いなどは「解約金とは別の実費」として都度精算します。加盟金は原則返還されず、加盟預託金は実費との相殺後に残額が返還されるのが一般的です。つまり、契約条文の解約金だけ見て安心せず、総キャッシュアウトで考えることが大切です。
プロセスとスケジュールの実際
多くは「解約の意思表示→協議→合意書締結→閉店準備→引渡し→最終精算」という流れです。解約予告期間(例:60〜90日前)が置かれ、予告を守らないと解約金が加算される条文もあります。在庫・什器・契約の棚卸し、家主との原状回復協議、従業員対応、許認可の返納、各サービスの解約手続きまで、工程は多岐にわたります。金額よりも段取りの可視化が、追加出費を防ぐ近道です。
小さな数値例(イメージ)
- 残存24か月、平均ロイヤリティ月18万円、係数0.5
→ 解約金=18万×24×0.5=216万円 - 実費(概算):原状回復150万円、看板撤去20万円、在庫処分ロス30万円、公共料金等の清算10万円
→ 実費合計=210万円 - 預託金が100万円あり、相殺後に返還される残額が20万円とすると、
→ 最終の手元持ち出し=216+210−20=406万円
数字は一例ですが、判断は解約金+実費−戻りの合算で行うのが安全です。
交渉で現実的に効く“落としどころ”
金額そのものを大きく動かすのは難しくても、条件や現物の扱いで総額を下げられることがあります。たとえば、後継テナントや本部直営への賃借権の承継が決まれば原状回復を縮小できます。在庫や什器を本部・近隣店で買い取り/転用すれば処分ロスが減ります。解約金は分割払いや一定の猶予にできる場合もあります。合意解約に切り替え、相互の権利放棄(リリース)やノンディスパラージメントを含めて円満に収める選択も現実的です。
契約前に最低限チェックしたいこと(要点を二つだけ)
- 算定方法と清算範囲:固定か算式か、上限・下限はあるか。原状回復や在庫処理などの実費は別清算か、どこまでが解約金に包括されるのか。
- 手順と期限:解約予告期間、合意書の締結タイミング、明け渡し・表示撤去・データ消去の期限、返金・相殺・預託金返還の期日。
よくある誤解とつまずき
「解約金を払えば全部終わる」と考えがちですが、実費の方が高くなるケースは珍しくありません。逆に、解約金条項があっても、本部が実害の小さい事案では金額を調整することもあります。どちらに転んでも、早めの相談と見積りが鍵です。なお、ここでの説明は一般的な実務の話であり、最終判断は契約条文と個別事情、そして専門家の確認に従ってください。
まとめ
解約金は“途中でやめること”のルール化された清算です。見るべきは条文の金額ではなく、総キャッシュアウト。
金額の決め方と範囲、2) 実費の内訳、3) 手順と期限を先に言語化しておけば、いざという時に慌てません。終了は新しいスタートでもあります。計画的に畳み、現金を守り、次の一歩につなげてください。