拘束条件付取引
取引の“前提条件”で相手の自由を縛る契約――フランチャイズでは何が許されるか
拘束条件付取引とは、取引をする際に「仕入先はA社に限る」「この価格でしか仕入れてはならない」「このシステム以外は使ってはならない」など、相手方が第三者(卸先・仕入先・サービス提供者)とどのように関わるかを契約条件で拘束する行為を指します。日本では公正取引委員会の独占禁止法・不公正な取引方法(一般指定第13項)で原則として禁止される類型に位置づけられます。目的が競争制限に当たり、相手の取引先選択や価格交渉の自由を不当に奪うと判断されると、違法性が問題になります。
一方で、フランチャイズは同一品質・同一サービスを全国で再現することが前提の仕組みです。安全・衛生やブランド統一のために、食材・資材の規格、情報システム、ユニフォーム、看板仕様などをそろえる合理的な指定がないと、チェーン品質は維持できません。このため、フランチャイズにおける「指定」や「推奨」が直ちに違法となるわけではなく、目的と程度が合理的か(必要最小限か)、競争を不当に制限していないかで評価が分かれます。
典型例と判断の軸(必要最小限の整理)
- 典型例
仕入先の強制、特定商品の専売・抱き合わせ、指定価格での仕入れのみを許容、外部システムの使用禁止など。 - 判断の軸
品質・安全・衛生管理やブランド保全に必要不可欠か、代替手段がないか、加盟者の選択肢や交渉余地を過度に奪っていないか、そして競争の実質的制限につながっていないか。
フランチャイズでは、たとえばアレルゲン管理や食品表示の観点から原材料・工場を指定する、決済セキュリティ基準(PCI DSS等)を満たすために決済端末を統一する、といった合理的理由のある指定は認められやすい傾向があります。逆に、品質と無関係な囲い込みや、他社利用を不当に妨げる条件は、独禁法上の問題になりやすい領域です。
フランチャイズ加盟前に確認したいポイント
- 目的の明確化
指定や禁止の理由が「品質・安全・法令対応・ブランド一貫性」に紐づいて書かれているか。販売促進や手数料確保だけが目的になっていないか。 - 範囲と代替可能性
指定は品目・機能・期間が限定され、同等品や代替システムの承認ルートが用意されているか。 - 費用と交渉余地
指定によるコスト(仕入価格・手数料・ライセンス料)が市場価格と大きく乖離していないか。共同購買のメリットや価格改定時の説明責任が明示されているか。
まとめると、拘束条件付取引は「相手の自由を縛る前提条件」を伴う契約です。フランチャイズでは、チェーン品質のための必要最小限の指定は許容され得ますが、目的・範囲・コストの合理性が要件になります。契約書と運営規程で根拠と手順を確かめ、疑問点は文書で照会しておきましょう。合理性が説明できる指定はブランドを強くし、不透明な指定はチェーン全体の信頼を損ないます。