名板貸

名板貸(なまいたがし)とは、自分の商号(会社名や屋号)を、他人が営業活動に使うことを許す行為のことを指します。見た目や取引上、その商号の持ち主が実際にその事業をしているかのように見えるため、消費者や取引先が誤解する可能性が高くなります。

これは商法に基づく法的な責任が発生する重要な概念です。

商法における規定(商法第14条)

商法14条では、名板貸に関して以下のように定められています。

「自己の商号を使用して営業または事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人がその営業を行っていると誤認した第三者と他人が取引した場合、その取引により生じた債務を、他人と連帯して弁済する責任を負う。」

つまり、商号を貸した側(本来の所有者)は、第三者に誤認されて取引が行われたとき、責任を問われることがあるということです。

フランチャイズにおける名板貸のリスク

フランチャイズでは、加盟店が本部の商号やブランドロゴを使用して営業を行います。これは本質的に名板貸の要素を含むため、次のようなリスクが発生することがあります。

  • 加盟店がトラブルを起こした場合、消費者や取引先は「フランチャイズ本部と取引した」と誤解する
  • 加盟店の信用問題が、本部の信用やブランドイメージにも直結する
  • 契約で責任分担を明記していても、第三者の認識次第では法的責任を問われる可能性がある

実際に起きうる例

たとえば、加盟店が商品の仕入先と取引をして代金を支払わなかった場合、その取引先が「有名なチェーン本部と直接契約した」と信じていた場合、フランチャイズ本部が連帯責任を問われる可能性があります。

契約上の対応と限界

フランチャイズ契約では、以下のような対策が一般的です。

  • 「本部と加盟店は別法人である」ことを明記
  • トラブル時の責任分担を契約で定める
  • 加盟店に「本部とは別事業者である」と明確に表示させる義務を設ける

しかし、これらはあくまで内部契約上の取り決めであり、第三者にとって誤認される状況があれば、実際の取引では名板貸責任が発生することもあります

まとめ

名板貸とは、自社の商号を他人に使わせることで、本来無関係な取引においても連帯責任が生じる可能性がある行為です。フランチャイズ本部は、加盟店の行動が本部の信用に直結することを認識し、契約や指導の中でトラブル予防策を徹底する必要があります。

加盟希望者にとっても、「ブランドを使える」というメリットの裏に、本部との責任の分担関係やリスクについてもよく理解しておくことが重要です。