売上高予測

出店前に「この立地で、どれくらい売れるか」を数字で見立てる

フランチャイズの売上高予測とは、本部が保有するPOSデータや既存店の実績、商圏統計をもとに、新規出店候補の立地で見込める月次・年次の売上を見立てる作業です。目的は、開業判断と投資額の妥当性をチェックし、仕入れ・人員・広告の初期設計を現実的にすることにあります。あくまで“予測値”ですので、加盟店はこの数値を参考シナリオとして、ベース・ワースト・ベストの複数パターンで資金計画を組むのが基本です。

予測に使う主なデータ

  • 商圏と人流:半径◯mの人口密度、昼夜間人口、通勤動線、学校・駅・病院などの集客源。
  • 立地属性:道路の可視性、歩道の幅、駐車台数、競合・代替の有無、共同販促の余地。
  • 店舗プロファイル:延床面積、座席・マシン数、営業時間、オペレーションの型(セルフ/フルサービス)。
  • 価格と客単価:地域の所得水準と価格受容、メニューMIX、デリバリー比率。

これらを、類似店舗(プロファイルが近い既存店)との比較や、重回帰・機械学習による需要モデル、曜日×時間帯のパターン分析で組み上げます。本部の力量は、入力データの鮮度と量、前処理(季節性やイベントの補正)、そして“外れ値への耐性”で決まります。

予測は“確約”ではありません

数字に説得力があっても、オープン直後は天候や近隣の出店、デリバリー手数料の改定など、外部変数で上下します。だからこそ、加盟側は一本の数字を信じ切らず、固定費・在庫・広告の初期配置を調整可能な設計にしておきます。たとえば、開業初月の在庫は“回転◯日分”の上限を決め、人員は標準工数に合わせた段階投入にしておくと、下振れ時のダメージを抑えられます。

加盟前に本部へ確認したいこと(必要最小限)

  • 前提条件:予測の根拠になった可視範囲(商圏半径、比較した既存店の件数、最新データの時点)。
  • 精度の開示:過去の新店で、予測と実績の誤差(例:MAPE)がどの程度か。中央値や分布も見せてもらえるか。

この二点がわかれば、数字の“きれいさ”ではなく再現性を判断できます。サイトで資料請求をするときも、売上の“額”だけでなく前提と精度の開示を依頼してください。ランキングや「おすすめ」情報を見る際も、予測手法と検証姿勢がある本部ほど、実際の運営でぶれにくい傾向があります。

ベース・ワースト・ベストの“三枚”を必ず用意する

実務では、ベース(本部予測)に対し、客数▲30%・客単価▲5%のワースト、客数+20%・単価+5%のベストを自分でも作り、ロイヤルティや家賃、人件費を入れて月次キャッシュフローを試算します。ワーストで資金が尽きないなら、開業後の意思決定に余裕が生まれます。逆に、ベースですでに綱渡りなら、物件・面積・営業時間・導線の見直しを検討しましょう。

本部の“重要ミッション”

本部にとって売上高予測は、単なるセールス資料ではありません。出店の再現性を高め、撤退率を下げるためのコア技術です。モデルの精度を上げること、そして外れたときの是正フロー(販促・配置・メニューMIXの即時調整)までセットで設計することが、本部の重要なミッションになっています。

結局のところ、よい予測とは「数字が当たる」だけでなく、「外れたときに早く修正できる」ための羅針盤です。加盟店は数字をうのみにせず、自分の立地の物語に落とし込みながら、資金と人の配置を柔軟に調整してください。そうすれば、“予測の限界”は、現場の改善力で十分に乗り越えられます。