運転資金

毎月の「支払い」と「回収」のズレをつなぐための資金

運転資金とは、事業を日々回し続けるために毎月必ず発生する支出をまかなう資金のことです。典型的には仕入れ代金・従業員給与・家賃・水道光熱費・広告宣伝費・消耗品・税金や社会保険料の納付・借入金の返済などが含まれます。
「加盟金や内装費」といった初期投資と違い、運転資金は開業後に継続して必要になります。フランチャイズに限らず、小売・飲食・サービスのどの業態でも中心的な概念です。

仕入れてから現金になるまで時間がかかる理由

小売や飲食では、商品を先に仕入れ、少し遅れて販売→回収します。さらに給与や家賃は毎月決まった日に前倒しで出ていくため、支払いが先・回収が後になりがちです。この“時間差”を安全に埋めるのが運転資金の役割です。
フランチャイズでは、本部の集中精算(オープン・アカウント)により、仕入れ・ロイヤルティ・広告分担金などが売上から自動相殺され、差額が入金される方式もあります。ただし、家賃・給与・光熱費など店舗固有の支払いがすべて自動化されるわけではありません。入金日と出金日のズレは必ず確認し、資金ショートを防ぐ設計が必要です。

どのくらい用意すべきか(考え方の目安)

一般論として、固定費の2〜3か月分+平均在庫の1か月分を目安にすると、開業初期の売上変動にも耐えやすくなります。
たとえば、固定費(家賃・人件費・水道光熱・通信など)の合計が月120万円、平均在庫が80万円なら、運転資金=120万円×2〜3+80万円 ≒ 320〜440万円が一つの安全圏です。立ち上がりが緩やかな業態や、広告投下を重ねる計画なら、さらに1か月分のバッファを加えます。

重要なのは“額”そのものより、入出金のタイミングです。
月末締め翌◯日入金のチェーンで、給与が月末払い・家賃が月初払いなら、一時的な資金の谷が生まれます。週次のキャッシュ見通し(13週ローリングの資金繰り表)をつくり、谷の深さを事前に把握しておくと安心です。

フランチャイズならではの着眼点

本部によっては、集中精算・立替・短期貸付など、加盟店の資金繰りを補助する仕組みを持っています。便利な一方で、月の差引がマイナスになると、翌月以降の入金が圧縮されたり、利息・手数料が生じたりします。資金繰りの“見え方”が精算書頼みにならないよう、売上・粗利・控除明細を日次で確認し、異常値はSVに即共有する体制を整えてください。

運転資金に含める主なもの(最小限の整理)

  • 変動する支出:仕入れ代金、配送費、消耗品、広告費
  • 毎月の固定費:給与・社会保険、家賃、光熱費、通信、リース、返済、税金の予定納付

まとめ

運転資金は、店舗の“呼吸力”です。支払いが先、回収が後という現実の中で、毎日を安全に走り切るための残量を意味します。フランチャイズは本部の仕組みで資金の流れが整えられる分、「いくら必要か」だけでなく「いつ必要か」まで読み解けます。
フランチャイズ検討時の資料請求や説明会では、入出金のタイミングと控除項目を自分の言葉で説明できるまで確認し、固定費2〜3か月+在庫1か月を基準に、業態や立地に合わせて上積みしてください。そうしておくと、ランキングや“おすすめ”の評価に左右されず、あなたの店の足腰でしっかりと利益を残せます。