再販売価格維持(再販制度)

再販売価格維持(再販制度)とは、メーカーや製造業者が、小売店や販売業者に対して商品の販売価格(特に最低価格や定価)を指定し、値引き販売などを制限する制度のことを指します。
これは簡単に言えば、「この商品は絶対に◯円で売ってください」とメーカーが小売側に強制する仕組みです。

通常、市場での価格は販売側が自由に決められるべきですが、この制度がある場合、小売店はメーカーの指定価格で販売しなければならず、値引きが禁止されます。

日本における法的位置づけ

独占禁止法第19条および公正取引委員会の「不公正な取引方法」第12号により、販売価格の拘束(再販価格維持)は原則として禁止されています
これは、自由な価格競争を妨げ、市場の健全な競争を阻害する恐れがあるためです。

ただし、例外的に次の6品目については再販制度が認められています(2025年8月現在):

  • 書籍
  • 雑誌
  • 新聞
  • 音楽用CD
  • 映画のDVD・Blu-ray
  • ゲームソフト(著作物として扱われるもの)

これらは主に「著作物」であり、価格競争によってコンテンツ産業が衰退するのを防ぐ目的で、再販価格維持が例外的に許されています。

海外との違い

アメリカなど多くの国では、再販制度は存在せず、すべての小売業者が自由に価格設定を行います。
たとえば、書籍や電子書籍のセール、クーポン適用、バンドル販売などが一般的で、日本よりも価格競争が活発です。

フランチャイズにおける取り扱い

フランチャイズ契約のもとでは、本部(フランチャイザー)は加盟店(フランチャイジー)に対し、ブランド名(商標・商号)の使用許諾や商品・サービスの供給を行い、チェーン全体での品質や価格帯の統一を図ることが前提とされます

このため、以下のようなケースは実務上よく見られます:

  • 本部が「推奨販売価格」や「標準価格表」を提示
  • メニューやパッケージ価格がチェーン全体で統一されている
  • 販促キャンペーンの実施価格が本部主導で決定される

こうした「価格のガイドライン」は、あくまで“推奨”の範囲であれば問題ありません。

しかし、以下のような行為は独占禁止法違反となる可能性が高く、注意が必要です

  • 本部が加盟店に対し、値引き販売やセールを禁止する
  • 一方的に販売価格の拘束を行い、違反した加盟店にペナルティを課す
  • 地域の需要に応じた価格調整を一切認めない

これらは「再販売価格の拘束」に該当し、独占禁止法第2条第9項第4号で禁止されています。

地域事情と裁量

たとえば、都市部と地方で客層や購買力が異なる場合、同じ商品でも価格を柔軟に調整する必要があります。
また、売れ行きが悪い商品や在庫処分を目的とした値引きは、加盟店の運営上必要な判断であり、本部が一律に制限することはできません。

そのため、フランチャイズ契約の中では「価格設定に関するルール」を明文化し、加盟店の裁量をどこまで認めるかが重要になります。

まとめ

再販売価格維持(再販制度)は、本来は禁止されている価格拘束行為であり、フランチャイズ本部であっても、加盟店に対して一方的に価格を強制することはできません。

ただし、チェーンのブランド価値や顧客体験を守る観点から、「価格の統一感」は重要な戦略の一部でもあります。
このバランスをとるためにも、以下を意識して運営・加盟検討を行いましょう:

地域や業態による価格調整の可否を本部と共有する

推奨価格と拘束価格の違いを理解する

契約書における価格設定の裁量範囲を確認する